松浦・岩本が被告側(交通事故加害者側)を代理した裁判例(東京地判令和6年9月6日)が、自保ジャーナル第2180号(令和7年4月24日発行)に掲載されました。
この事案は、第1事故の3日後に第2事故が発生し、原告側は第1事故で受傷し第2事故でそれが増悪したと主張したものです。当方は第1事故の加害者側を代理しました。
判決では、第1事故による受傷は認められないとして、第2事故の加害者に対しては賠償を命じる一方、当方に対する請求は棄却されました。
本件のように、交通事故により受傷したとして通院中に次の事故に遭うといういわゆる多重事故のケースは非常に多く、また解決が難航する割合が非常に高いと思われます。
法的には、別日で別の場所で発生した事故は通常「共同不法行為」とは評価されず、前事故と後事故の加害者はそれぞれ自身が起こした事故に対応する被害についてのみ賠償する義務を負います。ところが、自賠責保険の支払い実務ではこのようなケースも「異時共同不法行為」と呼び、2事故分の自賠責が利用できるケースが多いため、保険会社の担当者でも両者の概念を混同してしまうケースが多いようです。
別事故がある場合には、被害者の症状の部位や程度等の推移を通常の事案以上に慎重に確認したうえで、各事故と症状との因果関係の有無や、前事故による素因減額、各事故の寄与度などを検討して賠償を行う必要があります。本件が、多重事故の事案の解決のために少しでも参考になれば幸いです。