担当事案が自保ジャーナル2137号に掲載されました

松浦・岩本が被告側(交通事故加害者側)を代理した裁判例(東京地判令和4年8月22日)が、自保ジャーナル第2137号(令和5年7月13日発刊)に掲載されました。

この事案のポイントは以下3点です。
①外貌醜状の逸失利益
原告は前額部の挫創により自賠責において後遺障害9級16号に認定され、67歳まで労働能力喪失率35%を前提に4億3608万6000円の逸失利益を主張しました。
これに対し、当方は、原告はある程度人前に出る必要のある職務(コンサルタント)に従事していたものの、原告が本件事故後に形成外科への通院を中断したこと、精神科への通院も事故から2年半以上経過後であること等から、逸失利益は発生していないと主張しました。裁判所は同様に認定し、逸失利益を否定しました。
②パートナー就任機会喪失による損害
原告は、本件事故により勤務先においてパートナーに就任できなかったとして、これによる損害として5000万円を主張しました。
これに対し当方は、上記の通院状況から創部が業務への支障になったとは考え難いこと、原告がパートナー待遇を外されたのは本件事故の8カ月後であり、それまではパートナーとして処遇されていたこと、尋問において原告本人がパートナーを外された理由は分からないと供述していること等を指摘し、損害を否認しました。裁判所は同様に認定し、 パートナー就任機会喪失による損害を否定しました。
③過失割合
原告はロードバイクで横断歩道を横断していたところ、ヘルメットを着用せず、このことが頭部の挫傷に影響したとして、10%の過失相殺が認定されました。

本件は6億4000万円強という高額の請求がなされましたが、判決では260万円程度の認容となりました。
外貌醜状の逸失利益については、タレント・モデル等の外貌が収入に影響しやすい職業では認定されやすく、一般的なデスクワークの会社員・公務員等の収入の安定性の高い職業では否定されやすい傾向にあります。
実際の事案解決に際しては、被害者の具体的な業務内容や事故前後の実収入を確認すること、外貌醜状の程度やこれに対する被害者の受け止め方を医療記録から精査することが重要と考えられます。
同様の争点を含む事案のご参考になれば幸いです。